ブルーノ・リグットは青年時代から天才的なショパン弾きとして知られていましたが、現在はさらに内省的に表現を深めた素晴らしい演奏で、聴衆を静かで熱い感動へといざないました。シューマンの『子供の情景』とショパンという得意のプログラムでのリサイタルに加え、ショパンの協奏曲第2番をルーベン・ガザリアン指揮ヴュルテンブルク室内管絃楽団と共演しました。30日の協奏曲コンサートでは、熱烈なアンコールにこたえて、第2楽章がふたたび演奏されましたが、客席の拍手はいつまでも鳴りやまないほど。インタビューでも温かな言葉で、サンソン・フランソワに師事した若き日々のことや音楽における自由の意味について率直に語ってくれました。「ショパンはなんでも打ち明けられる友人」と、リグットさんは言います。今回のナント出演は急な依頼にこたえての初参加とのことで、数多くのコンサートのなかでも、ショパンの真実の声が聞こえるようなブルーノ・リグットの演奏はひときわ深く心に刻まれました。