ラ・ロック・ダンテロン・ピアノ国際音楽祭:演奏会レポート8月6日、7日

●8月6日20:00~
ジャック・シャルモ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア+エクス・フィル合同オーケストラ、広瀬悦子(ピアノ)
会場はラ・ロックから車で走ること1時間。17世紀に建てられたお城の庭がコンサート会場。20時といってもまだ明るく、お客さんはみなシャンパンなどを戸外で楽しんだ後、コンサートに臨みます。鮮やかなブルーのドレスでソリストの広瀬悦子さんが登場すると、その拍手の様子でいかに皆が期待しているかがわかります。シューマンのピアノ協奏曲の演奏は現地にて以下のように絶賛。フランスのアート・ポータルサイト「performArts」に掲載され ました。
「たぐいまれな才能を持つ広瀬は、その優雅さですっかり聴衆の心を奪った。広瀬のピアノ演奏のあらゆる美点が生みだす極上の音楽性は、詩情ほと ばしる [シューマンの] 協奏 曲にまさにふさわしい。(略)広瀬の指が鍵盤にふれるたびに、火の粉が散らされる。きわめてデリケートなペダリングに支えられ、真の"第7 感"を展開させていく広瀬の演奏は、シューマンの音楽の要である甘美な濃淡をも超越していた。」
公演後はサイン会。
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疲れていても、一人一人名前を聞きながら丁寧にサインをし、フランス語で会話を楽しみながら笑顔で接しています。
●8月7日18:00~
シャニ・ディリュカ(ピアノ)によるファミリー・コンサート
過去のLFJでもトーク・コンサートやキッズ・プログラムで素晴らしいステージを披露したシャニ・ディリュカ。今回の「おとぎ話と伝説」と題されたトークつきのリサイタルも、子供から大人まで楽しめる、まさに家族向けのコンサート。シューマンの「蝶々」、ドビュッシーの「月の光」、グリーグの抒情小品集などの作品を、まるで絵本のページをめくるかのごとく、色とりどりの情景をイメージしながら聴くことができました。ドビュッシーの「雨の庭」では「最初のテーマがいかに形を変えて繰り返されるか、みんなで数えてみましょう」という問いかけとともに、大人も子供も指を折りながら真剣に聴く様子がなんともほほえましい。コンサート後もシャニは子供たちに取り囲まれて、質問攻めにあっていました。
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●8月7日21:00~
ヤツェク・カスプシク指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア、ダニエル・トリフォノフ(ピアノ)
昼過ぎにルネ・マルタンから聞いたのは「今晩は雷雨の予報がでているので、野外コンサートの対策を練っている」とのこと。予報が当たりポツポツと雨が降り始め、開場時には全員にビニールのカッパが配布されました。次第に雨は勢いを強め、開演直前には傘をささずにはいられない勢いに。数人が傘をさし始めましたが、ステージが見えなくなるので、後方席より「パラプリュイ~(傘を閉じて~)」の大合唱。皆しぶしぶと傘を閉じます。そこでルネ・マルタンがステージに登場。「今晩は雨がひどくなる予定なので、曲順を変えて、後半に予定していたトリフォノフさんのソロによるピアノ協奏曲から始めます。」
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さて、ショパンのピアノ協奏曲第2番の演奏が始まると、トリフォノフによる天才的で感性にあふれた演奏に引き込まれ、雨のことなどまったく気にならなくなりました。それよりも、雨の音により、マヨルカ島で雨だれのプレリュードを作曲した頃の病気に冒されたショパンが想起されます。青春時代のショパンを聴きながら、後年のショパンが重なるという貴重な体験をしました。残念ながら雨はさらにひどくなり、協奏曲後にコンサートは打ち切りとなりましたが、皆が笑顔で帰っていきました。

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