今年のナントのテーマは「アメリカ」。アメリカの作曲家、アメリカに縁のある作曲家を取りあげているのですが、巨匠コルボが指揮したのはドヴォルザークの「スターバト・マーテル」ピアノ伴奏版。ドヴォルザークはニューヨーク・ナショナル音楽院の院長を務めていたんですね。コルボさんにお話をうかがいました。
「ドヴォルザークのスターバト・マーテルは東京でも演奏したいと思っています。とても抒情的で深遠な作品です。深い内面性を感じさせる作品なので、東京のみなさんにもきっと気に入っていただけるでしょう」
ナントでコルボさんが指揮するのはこのドヴォルザークのみですが、東京では加えてモーツァルト、フォーレ、ブラームスのそれぞれのレクイエムの演奏が検討されているとか。ブラームスはピアノ連弾の伴奏による版を用いるそうです。
「ブラームスのドイツ・レクイエムといえば通常のオーケストラ版が偉大な作品ですから、ピアノ伴奏版だと作品が小さくなるのではないかと最初は心配していました。ところが実際に演奏すると、オーケストラ版とはまったく違った新しい感動を与えてくれる別の作品だということがわかったのです。オーケストラ版にある官能性に代わって、繊細な感受性が伝わってくるんですね」。
ナントでも東京でも活躍するラ・フォル・ジュルネの顔とでもいうべきコルボさん。音楽祭についてこう語ってくれました。
「ラ・フォル・ジュルネではルネ・マルタンを中心に音楽家たちが集まって、ひとつのファミリーをなしています。彼らとの友情を大切にしたいと思っています。音楽は友人のためにするものですから。そして聴衆のみなさんといっしょに音楽の喜びを共有したいですね」