ブラームスとシューマンは同時代に活躍した作曲家で、シューマンの方が少し年上です。
シューマンというと、ブラームスを世に紹介したことで有名です。そしてブラームスはシューマンの曲からテーマを選び、変奏曲を作曲しています。シューマンはブラームスと会ってしばらくして精神をおかしくしてしまったため、二人が音楽について語り合ったのがいったいどれだけの時間だったのかは分かりません。ただ、お互いの才能・作品を尊敬しあっていたことは間違いないと思います。
さて、シューマン弾きとして知られるピアニストの伊藤恵が、このブラームスとシューマンの作品を演奏しました。シューマンは幻想小曲集全曲、ブラームス作品は「シューマンの主題による変奏曲」です。二人の作曲家が取り上げられていますが、シューマンづくしです。フフフ。
でも、こうやって二人の作品を並べて聴いてみると、その違いは明らかでした。
ブラームスの変奏曲を聴くたび、その作曲技術に驚きます。シューマンのメロディをテーマにしているからか、音楽の色彩がやはりシューマンっぽいですね。シューマンの幻想小曲集は、さまざまな要素を含んだ、ちょっと影のある作品。伊藤さんはどちらもそれは見事に表現されていました。
はあ~、ステキでした。

フルート界にキラ星のごとく光を放つ上野星矢さんが、LFJに登場!
昨日は5000人のホールAでモーツァルトを、今夜は153席のG409でシューベルトを聴かせて下さいました! 黄金に輝くフルートです。
上野さんのフルートの演奏は、音色の変化・引き出しがあまりに豊富! ホールの規模によって自由自在、融通無碍にどんな響きも作り出してしまうのです。
沈黙から立ち上がり、そして減衰してフワリとまた沈黙にとけ込むフルートの音が、こんなにも美しいなんて! フルートって奇麗に弱音を出すのがとっても難しそうじゃありませんか? ところが上野さん、魔法のように、今にも消え入りそうな音から、空へと向かって飛翔して行くような力強い音まで、それはそれは鮮やかに音が伸縮するのです!
同じメロディーであっても、二度と同じようには現れない。繰り返されるたびにどんどん色味や細さ・太さ、伸びが変わる。50分間の演奏があっという間に過ぎ去ってしまいました。もっと聴いていたいくらい......
LFJ初登場にして両極端のキャパのホールで演奏された上野さん。いかがでしたか?
「両方の公演をお聴き下さった方にはよく違いをわかっていただけたと思いますが、ホールAとG409では使うべき音色が違いますので、それぞれに変えました。今夜のような小さな会場では、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタと『しぼめる花』による序奏と変奏曲を演奏できたのは良かったですね。サロンのような雰囲気ですから。」
夜のしっとりしたガラス棟で、こんな上野さんの音楽と出会えたなんて、なんたる幸せでしょう。
本日演奏されたシューベルトの作品は、上野さんがちょうど10年前に開かれたデビュー・リサイタルでも演奏されたそうです。LFJも10周年ということで、とてもご縁を感じるプログラムですね!
そして、これまた鮮やかなハーモニーを響かせてくれたのは、ピアノ奏者の内門卓也さん。なんでも上野さんとは9年に渡って共演されているそうです。なるほど柔らかくとけ込むお二人のハーモニーには歴史あり、ですね(お若いのに!)。アンコールに演奏されたシューベルトの「アベ・マリア」、どんなに聴き慣れたこの旋律も、お二人の手にかかればどの瞬間も新鮮な響き。いやぁ...じんわり堪能。
とてもフレンドリーでスター性が滲み出まくる上野さん。あっという間に即席フォトセッション・タイムになってしまいました!本日のお客様、とってもラッキーでしたね。